2025/05/02
皮ふのあれこれ
「タピナロフクリーム」について
今回はアトピー性皮膚炎の主だった薬である、ステロイドとは違う働きを持つ、「タピナロフ(商品名:ブイタマークリーム)」についてお話しします。
アトピー性皮膚炎の原因は「サイトカイン」と呼ばれる本来ならば、体を守るために働く物質が必要以上に増えることで、
皮膚のバリア機能障害を起こしたり、
皮膚の炎症反応を過剰に起こしたり
皮膚に侵入してきたアレルゲンに対して、過敏に反応したり、
その結果として強い痒みを起こすことがわかってきました。
この「タピナロフ」は異常に増えてしまった「サイトカイン」を抑え、
その上、皮膚のバリア機能を高める働きのある薬です。
では、ステロイドとはどう違うのでしょうか?
「ステロイド」の作用は、炎症を起こしている「炎症細胞」を鎮静化する作用です。
ということは、ステロイドは火事の起こっている「炎」を消すための「水や消火器」の働き。
「タピナロフ」は「火種になっている大元を無くす働き」と考えるとわかやすいでしょう。
塗り方は1日1回のみであり、1日2回塗らないといけないステロイドと比べると、患者さんの負担が軽減します。
また、塗り心地としては、「クリーム」タイプのため、軟膏剤のようなベタつきが気になる方にも良いかもしれません。
また、ステロイドは体の部位によって、ステロイドの強さを変える必要がありますが、「タピナロフ」は顔も体も、陰部も外用することが可能です。
副作用としては、外用部に「ニキビ」ができる可能性が17%と多く報告されているほか、「頭痛」の発症率も11%あるそうです。
「頭痛」の副作用は現時点では原因が解明されていないようですが、使い始めの初期に現れることが多いとのことです。
また、使用が可能な年齢は12歳以上になります。
慢性的に続く皮膚の痒みは患者さんのQOLを下げます。
痒みのために、睡眠障害、仕事や勉強の質を下げ、
顔や四肢など露出部に出ている皮膚炎で人の目を気にする方もいらっしゃいます。
しかし、アトピー性皮膚炎の治療薬も続々と新しいものが使用できるようになり、
患者さんの選択肢が非常に増えてきました。
いくつかの選択肢の中でどの治療方法、治療薬が良いのか、ぜひ皮膚科専門医と一緒に考え、安心かつ適切な治療を行っていきましょう。