2022/02/28
皮ふのあれこれ
アトピー性皮膚炎と汗について
汗は体の体温調節をするために出ることはご存知かと思いますが、皮膚表面の感染防御のための役割もあります。
アトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚の一部では汗の出が悪くなり、それを補うように他の部位で汗がたくさん出てくることが、皮膚炎の悪化をもたらすことがわかっています。汗が皮膚の表面に出てくると、汗自体が皮膚の乾燥を防ぐ役割もします。
冬は汗がたくさん出ないので、皮膚がカサカサしていても夏になると皮膚がしっとりしやすくなることからも理解しやすいことでしょう。
しかし、アトピー性皮膚炎の患者さんでは皮膚の一部では発汗量が減り、それを補うように関節や首などでは汗が増えていると言われています。夏でもアトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚が乾燥しているのは発汗量が減っているということも一つの要因です。
そのほかにも汗の中には「抗菌ペプチド」と呼ばれる物質が含まれ、その名の通り皮膚の表面にくっついた病原性のある細菌やカビが増殖しないようにコントロールしています。気温が上がってくると、細菌やカビの増殖力が高まるのですが、健常な皮膚では適度な汗をかくことにより、「抗菌ペプチド」が働き、皮膚感染症を抑えています。
しかしながら、アトピー性皮膚炎の患者さんでは発汗作用が低下していることが多いため、「抗菌ペプチド」も少なく、細菌やカビが皮膚表面で増殖しやすくなります。
例えば、病原性のある細菌の代表である「黄色ブドウ球菌」。
健常な皮膚の人のほとんどは皮膚には検出されないのですが、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚には常時居座っており、この菌自体も皮膚炎を悪化させるのです。また皮膚には「マラセチア」と呼ばれる誰の皮膚にも常時存在する「カビ」。これは健常な人では特に悪さをしないカビです。
しかしアトピー性皮膚炎の患者さんでは「抗菌ペプチド」が少ないため、マラセチアが増殖しやすく、かつこのカビが汗と反応するとアレルギー抗原の一つとなります。発汗が低下しているとはいえ、運動などで発汗作用が高まると、汗の出てくる部位が猛烈に痒くなるのです。
また、アトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚全体で発汗量が減少しているのではなく、代償性に多く出ている部分もあります。
ということは、汗の多く出る部位では他よりも汗が濃くなっており、このことも痒みが増す原因の一つなのです。
ではこれからの気温が上がってくる季節、アトピー性皮膚炎の患者さんはどうスキンケアーをしたら良いでしょうか。
まずは、皮膚を清潔に保つことが重要です。
「抗菌ペプチド」が少ない状態であれば、細菌やカビを皮膚表面に増やさないことが大事です。